大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和36(オ)267 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告人の上告理由第一点及び第二点について。

しかし、所論印鑑証明書は、上告人が本件公正証書作成に備えて、予じめ委任状

とともに被上告銀行に交付しておいたものであること、及び上告人の代理人となつ

て本件公正証書の作成にたずさわつた訴外Dは、右公正証書の作成嘱託及び執行認

諾を上告人から委任され、それにつき正当の代理権を有していたものであることは、

原審が適法に確定した事実関係から容易に窺われるところである。

してみれば、右印鑑証明書が、たとい発行後六ヶ月を経過するものであつても、

当該代理人にして真実代理権を有する以上、その嘱託に基いて作成された本件公正

証書及び執行の認諾は固より有効といわざるを得ない。

論旨は、所論民事局長の通達には、右の場合の印鑑証明書は発行後六ヶ月以内の

ものでなければならないとあるのに、本件印鑑証明書は既に発行後六ヶ月を経過し

たものだつたのであるから、かかるものを提出させて作成した本件公正証書は無効

である旨主張するが、所論の右通達は、別段法規としての性質を有するものとも解

されないから、公証人がたといその趣旨に副わない取扱いをしたとしても、その一

事をとらえて直ちに公正証書作成手続に法令上のかしがあるとし、公正証書の効力

を否定しなければならぬいわれはない。�

されば、右と同趣旨の見解に立つて、本件請求異議の訴を認容しなかつた原審の

判断は正当であり、論旨は採るを得ない。

同第三点について。

しかし、被上告銀行が、主債務者に対してまず所論請求をすべきものであるかど

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うかは、本訴請求異議事由の存否にかかわりのないことであるから、原審がこれに

ついて審理しなかつたとしても、所論の違法はない。

同第四点について。

所論はひつきよう原審が適法にした事実認定を非難するに帰し、本訴請求を排斥

した原審の判断に所論の違法は認められないから、論旨は採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第一小法廷

裁判長裁判官 高 木 常 七

裁判官 斎 藤 悠 輔

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 下 飯 坂 潤 失

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